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Introduction

牡丹の精に扮した男児と獅子の掛け合いが愛らしい「福田の獅子舞」は、300年以上続く地域の宝です。爽やかな秋晴れの中、「トン、トッコトンッ♪」という楽しいリズムに誘われ、続々と人が集まってきましたよ。


秋空に響く太鼓の音、獅子舞が繋ぐ地域の輪

福田の獅子舞

福田町が受け継ぐ300年の伝統

 10月の第1日曜日。朝晩が冷え込み、田んぼの稲穂が黄金色に輝き始める季節に、福田町の稲生神社では秋祭りが開催され、毎年「福田の獅子舞」が奉納されます。
 江戸時代に四国から伝わったとされるこの獅子舞は、300年以上もの間、地域で大切に伝承されてきました。当時、天災や疫病に悩む人々が、獅子舞を奉納することで五穀豊穣と村の繁栄を祈願したことが始まりだそうです。1981年には広島県の無形民俗文化財に指定され、現在は地元の有志で発足された「福田の獅子舞保存会」が、その伝統を受け継いでいます。

男児が太鼓を多彩に打ち分ける

 「福田の獅子舞」の主役は、その年の数えで12歳になる男児たちです。この習わしは、疫病が流行した時期に12歳の子どもが最も多く病気にかかっていたことから、「病気を克服し、健康に育ちますように」という願いも込められています。もともと男児は4人だったが、近年の少子化や時代の変化に伴い、現在は年齢に幅を持たせ、少人数でもできるようになっています。2024年は、大乗小学校に通う森下陽介くん(6年生)と天満心遥くん(5年生)の2人が、主役を務めることになりました。

 「ようちゃん」「みーくん」と呼び合う仲良しの2人。陽介くんは3回目、心遥くんは2回目の経験者で、「去年は4人だったので、少し寂しい」と話しつつ、夏休みから練習を重ねてきました。
 最初は落ち着いていた2人も、牡丹の精に扮する衣装や化粧をほどこされ、だんだんと表情は真剣そのものに。その横では獅子や祭りばやしを担当する大人も続々と集まり、緊張感も高まってきました。

 「福田の獅子舞」は、牡丹の花冠をかぶった男児が、32通り(現在は16通り)に太鼓を打ち分け、獅子がそのリズムにあわせて上下左右に動き、噛み付いたりたわむれたりする舞い。太鼓の音により獅子を追い払い、苦行を克服することで、成長すると言われています。心遥くんは、父親が獅子役で参加するため親子共演。「大人になったら、お父さんみたいに獅子をやってみたい」と、話します。
 また、陽介君のおじいちゃんも祭りばやしとして参加。世代間のつながりが感じられるのも、歴史あるお祭りだからこそですね。

父から子、子から孫へ

 稲生神社には、近所の人々だけでなく、遠方からのファンもたくさん集まります。中には、「小さい頃に太鼓を叩いた」と懐かしそうに語る年配者の姿もありました。
 「福田の獅子舞保存会」のメンバーは、子ども時代に祭りに参加した人たちが多く、当時の楽しかった思い出が「活動の原動力」という人が少なくありません。代表を務める中村秀司さんも、小学生の時に太鼓を担当した1人。「保存会へは、先輩に誘われて参加した」と話しますが、今では子どもたちへ熱心に太鼓を教え、「大人になって、また参加してほしい」と思いを語ります。実際、和気藹々と祭りを盛り上げる大人の姿を、子どもたちはしっかり目に焼き付けていることでしょう。

 いよいよ「福田の獅子舞」本番です。リズムを刻む太鼓の後ろで、2頭の獅子が舞います。1頭の獅子を大人4人が操り、約5kgにも及ぶ獅子の頭は交代で担当。リズムに合わせて獅子の耳や口がパカパカと動く様がなんとも愛らしく、牡丹の精との掛け合いから目が離せません。
 練習の成果をしっかりと発揮した陽介くんと心遥くん。「出来栄えに点数を付けると?」という質問に、それぞれ「99点」「92点」と高得点。もう一歩及ばない理由は「緊張したから」と可愛らしい答えでした。

祭りで深まる福田町民の絆

 「福田の獅子舞」を奉納した後、稲生神社で神事が行われ、最後に、神体を神輿で「大乗神社」まで送り届けて、秋祭りの幕が下りました。
 夕方からは、「福田の獅子舞保存会」と祭りの総代の方たちで宴会が開かれました。参加者たちにとって、宴会も祭りの一部です。「無事に開催できてよかった」「今年も子どもと一緒に参加できてよかった」といった安堵の声があちこちから聞こえ、達成感が漂っています。
 祭りは文化を伝えるだけでなく、喜びを共有しながら地域の絆を深め、結束力を高める力があります。福田の地域性を育んでいるのは、まさしく「福田の獅子舞」なのかもしれません。

Information

Interview destination:
福田の獅子舞
address:
729-2312
広島県竹原市福田町1001-2
access:
JR大乗駅から徒歩約20分