
Introduction
カチカチと小気味良いヘラの音が響き、ソースの香ばしい香りが店内を包む。シンプルな食材だからこそ、つくり手のこだわりが一層引き立つお好み焼き。竹原で、あなた好みの一軒を見つけに出かけてみませんか?


圧倒的な火力で旨味を封じ、焼き上げる
―お好み焼 御幸
ジャーという音と共に、鉄板から舞い上がる湯気で店主が包まれる圧巻の光景は、「お好み焼 御幸」の名物。300度以上にもなるこだわりの鉄板で食材を手早く焼き上げた後、秘伝のスープをかけて一気に蒸すことで旨味を凝縮させるのが、御幸のお好み焼きです。完成までわずか数分で仕上げるのは、食材の美味しさを逃さないようにと考案された独自の手法。昭和47年に創業し、現在は91歳の初代店主片山弘之さんと、二代目修司さんの親子2人で腕を振るっています。





「お好み焼きはB級グルメではなく、私にとっては立派な料理」と話す修司さんは、洋食店での修業を経て、40年近くお好み焼きと向き合ってきました。食材を厳しく目利きし、柔らかくてジューシーな南九州産の豚肉をはじめ、国産キャベツやネギ、大ぶりで新鮮な生エビやスルメイカを揃えるなど、妥協を許しません。
初代店主の奥様が大阪出身だったことから、御幸では広島風・関西風の両方を提供しています。どちらにも紅生姜を使うため、関西出身者には特に「懐かしい味」と好評。また、竹原のご当地グルメ、酒粕を生地に使う「竹原焼」も人気の一品。




女将・京子さんの明るい接客も魅力のひとつ。「酒粕がふんわり香る竹原焼きには、同じ発酵食品のチーズが合いますよ」「アツアツおでんに、この日本酒はどうですか?」など、自身が美味しいものを食べることが好きだからこその、心惹かれる提案に、ついついあれこれ試したくなってしまいます。
「故郷の味を食卓へ」との思いから、全国発送も始めた御幸。鉄板で一枚一枚丁寧に焼き上げたお好み焼きを急速冷凍しているため、レンジで温めるだけで、まるで出来立てのようなふわふわアツアツが楽しめます。とはいえ、湯気に包まれながら食べる臨場感はお店ならでは。鉄板を囲んで、ハフハフとほおばって。



お好み焼きで、竹原の賑わいをつくる!?
−お好み焼 ほり川
「たけはら町並み保存地区」内に位置する「お好み焼 ほり川」は、大正8年創業の醤油醸造元の蔵を改装した一軒。「創業45年、お好み焼き好きの母が始めました」と話すのは、二代目店主の堀川大輔さん。醤油づくりとお好み焼き店の経営を任され、フルーティーでまろやかなオリジナルソースを使ったお好み焼きをつくっています。店内は蔵の趣を残す高い天井や、立派な梁に重厚さ漂う落ち着いた雰囲気。一方、気さくな店主の接客が、楽しく和やかな空間をつくります。



ほり川のお好み焼きは、ソースで下味を付けて炒めたそばと具材を生地で包み、蒸し焼きにすることで、旨味を閉じ込めるのが特徴です。メニューは定番の広島風に加え、「純米吟醸たけはら焼」が名物。純米吟醸の酒粕をペースト状にして生地に加えることで、独特の甘い香りが口の中にふわっと広がる一枚に仕上がります。



竹原市を舞台にしたアニメ、「たまゆら」に登場するお好み焼き店のモデルになったことから、聖地巡礼をするファンも多いというほり川。「お客さんが喜んでくれるのが一番!」と、アニメ内のメニューを考えて実際に店で提供したり、コラボ商品を使ったりしながら、お店だけでなく竹原の賑わい作りにも貢献しています。




また、醤油作りは今なお続いており、店内でも販売しています。「濃いくち醤油」「かけしょうゆ」共にマイルドな甘味が特徴で、煮込み料理には濃口を、とうふや餃子など火を通さずに使う場合はかけ醤油がベスト。日本の伝統色を使った品のあるパッケージは「ひろしまグッドデザイン賞」にも選ばれ、お土産にもおすすめです。

「自分と関わることで、何か刺激を受けたり、面白いと感じたりしてもらえたら嬉しい」との思いから、地元ケーブルテレビ局への出演や、ライブや祭りといったイベントの企画など、さまざまなフィールドで活躍する堀川さん。新たな出会いを楽しみながら、お好み焼きを通して人の輪を繋げています。
目を見張るほど「極厚」の関西風
−お好み焼 将軍
昭和58年創業の「お好み焼 将軍」の看板メニューは、広島では珍しい関西風。当時、そば入りの広島風が主流だったため「他とは違うメニューが注目を集めるのでは?」と考えた初代店主が、関西で修業を積んで地元竹原で開業しました。その味を守り続ける現在の三代目店主、神田孝さんは、お好み焼き粉やソースを創業当時から変わらず関西から取り寄せる徹底ぶり。「この粉がなければ将軍のお好み焼きは成り立たない」と、仕入れに細心の注意を払っています。

将軍の関西風お好み焼きの特徴は、なんといってもその厚み。たっぷりのキャベツに天かす、牛肉、豚肉、生イカにエビ、卵2個を、今にも溢れてしまいそうなほど小さなボウルで巧みに混ぜ合わせて鉄板へ。ふんわりと空気を含んだ生地は、鉄板の上でこんもりと盛られ、25分ほどかけて水分を飛ばしながらカリッと焼かれます。




外はカリカリ、中はフワリとした独特の食感が将軍の関西風。とはいえ、竹原には麺入りを好む人も多いという理由から、メニューには麺入りのモダン焼も揃えます。そのほか、サッパリとした和風しょうゆソースで食べる、ネギたっぷりの「ねぎ焼き」や、明太マヨネーズがとろりとかかる「めんたいモダン」など変わり種も豊富。その人ごとに「推し」があるようで、「地元の支えで成り立っています」という店主の言葉から、足繁く通う常連の姿が目に浮かびます。



「学生の頃、よくここのお好み焼きを食べにきていたんです」と話す神田さんは、奥様と出会った後に、この場所が相手の実家であることを知って驚いたそう。「まさか自分がここでお好み焼きを焼くようになるなんて」と笑顔で話しながら、「今では一番長い職場です」と、これまでの21年を振り返ります。神田さんにとっての思い出の味は、いつしか別の人の思い出の味を作っているようです。

あなたの「美味しい」お好み焼きの味は?
お好み焼きは広島県民の心に寄り添う食文化。幼い頃から親しんだ味がその人の「美味しさ」の基準になることが多いものです。竹原市のお好み焼き店もまた、一人一人にとっての「懐かしい味」が詰まっています。さらに、竹原には3つの酒造会社があり、2009年には各店の酒粕を活用したご当地お好み焼きの開発が進められるなど、新たな歴史も刻まれています。竹原巡りを通じて、あなたのお気に入りの一枚と出会う旅を楽しんでください。
Information
- 取材先:
- お好み焼 御幸
- 営業時間:
- 11:00〜16:00
(テイクアウトは〜19:00)
※月曜日のみ11:00〜14:00
(テイクアウトも同様)
- 定休日:
- 月曜、火曜(祝日の場合営業)
- 住所:
- 725-0026
広島県竹原市中央5-9-1
- アクセス:
- JR竹原駅から徒歩10分
- 取材先:
- お好み焼 ほり川
- 営業時間:
- 11:00~14:00(LO13:30)
17:00~19:00(LO18:30)
- 定休日:
- 水曜
- 住所:
- 725-0022
広島県竹原市本町3-8-21
- アクセス:
- JR竹原駅から徒歩13分
- Website
- X (旧Twitter)
- LINE
- 取材先:
- お好み焼 将軍
- 営業時間:
- 11:00~14:00
17:00~19:30(LO)
- 定休日:
- 木曜、第2水曜
- 住所:
- 725-0026
広島県竹原市中央4-5-20
- アクセス:
- JR竹原駅から徒歩5分
- Website
- X (旧Twitter)
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